【山岳紀行】赤岳 ー 夏の八ヶ岳主峰へ
七月の終わり、八ヶ岳連峰の主峰・赤岳へ向かう。十一名のゲストと共に歩む二日間の山行は、文三郎尾根の岩稜と山頂からの展望に満ちていた。夏山の魅力を伝えるガイドとして、また一人の登山者として綴る、赤岳登山の記録
第一部:美濃戸口から赤岳鉱泉へ
福島を発ったバスが美濃戸口に着いたのは、正午近くのことだった。標高千四百九十メートル、八ヶ岳連峰の南麓に位置するこの登山口は、赤岳や阿弥陀岳への玄関として知られる。バスを降りると、夏の陽射しが容赦なく照りつけていた。
参院選が終わったばかりの頃である。政局は混迷を極めていたが、山は変わらぬ姿で我々を迎える。十一名のゲストの方々の表情を見渡す。初めての八ヶ岳という方もいれば、久しぶりの山という方もいる。全員が無事に赤岳の頂に立てるよう、安全を最優先に行動しなければならない。装備の最終確認を済ませ、我々は歩き始めた。
赤岳山荘を過ぎ、美濃戸の集落を抜けると、本格的な登山道が始まる。八ヶ岳——長野県と山梨県にまたがる火山群——は、南北約二十五キロメートルに渡って連なる。その主峰である赤岳は標高二千八百九十九メートルで、火山特有の荒々しい岩稜が特徴だ。沢沿いの道は、木漏れ日が心地よい。参加者の方々と言葉を交わしながら、ペース配分を慎重に見極める。
堰堤広場を過ぎる頃には、午後三時を回っていた。標高差七百三十メートルを三時間かけて登る計画である。樹林帯の中を淡々と高度を稼ぎ、やがて赤岳鉱泉の小屋が見えてきた。

小屋の上空では、ヘリコプターが物資の荷揚げを繰り返していた。山小屋の運営も時代と共に変わる。かつては歩荷が担いだ荷を、今では空から運ぶ。そんな光景を眺めながら、初日の目的地に無事到着したことに安堵する。

夕食は、山小屋としては驚くほど豪華なステーキであった。参加者の方々と、明日の行程を確認しながら食卓を囲む。おじいさんとお孫さんの女子高生という組み合わせが印象的だ。世代を超えて山を楽しむ姿が、この場にあった。
第二部:赤岳鉱泉から山頂へ
翌朝、午前四時五十分に小屋を発つ。小屋が用意してくれたおにぎりを手に、ヘッドランプの光を頼りに中山乗越へと向かう。空はまだ薄明るい。日が高くなる前に核心部を通過し、午後の天候悪化のリスクを避ける狙いだ。
行者小屋を経て、赤岳へと続く主稜線の取り付きに差し掛かる。ここからが本番だ。参加者の方々に、鎖場の通過方法を丁寧に説明する。三点支持、慎重な足運び、そして焦らないこと。
文三郎尾根の岩場が迫る。チョックストーンと呼ばれる巨岩を越え、鎖を掴みながら高度を稼ぐ。参加者の一人が、岩場に緊張した表情を見せた。声をかけ、ルートを示す。恐怖を乗り越えた時の達成感が、山の醍醐味の一つである。

文三郎尾根の分岐を過ぎ、キレット分岐、竜頭峰分岐と進む。足元の岩は八ヶ岳特有の安山岩で、しっかりとした手がかりがある。慎重に、しかし着実に高度を稼いでいく。

午前八時二十四分、日本百名山、赤岳の山頂に立った。眼下には南アルプス、北アルプス、そして富士山の優美な姿が霞の中に浮かんでいる。参加者の方々の笑顔が、何よりの報酬だ。

山頂は青空に包まれ、八ヶ岳の岩稜が四方に延びていく様が美しい。初めて二千メートル峰を越えたという方の感動の言葉が、この場に響く。

第三部:下山、そして美濃戸口へ

山頂での時間を過ごした後、下山にかかる。来た道を文三郎尾根へと戻り、行者小屋を経由して南沢ルートを下る。登りとは異なる景色が、新鮮に映る。
行者小屋で大休止を取る。参加者の疲労の色を見極めながら、下山のペースを調整する。小屋の売店では、バッジや手ぬぐいなどを手に取る方々の姿があった。山頂のバッジは、登頂の記念として人気がある。下山こそ気を抜けない時間帯だ。疲労が蓄積し、足元が不安定になりやすい。声をかけ、励まし、時に冗談を交えながら、全員の士気を保つ。
中ノ行者小屋跡を過ぎ、美濃戸山荘が近づく。樹林帯の中を黙々と下り、やがて美濃戸口の登山口が見えてきた。午後一時五十九分、全員無事に下山を果たした。
バスは蓼科の湯川温泉「かっぱの湯」へと向かう。二日間の汗を流す温泉が、疲れた身体に染み渡る。参加者の方々と湯船に浸かりながら、今日の山行を振り返る。赤岳の岩稜、山頂からの展望、そして共に歩いた時間。充実した二日間であった。
夏の八ヶ岳は、その懐の深さで我々を迎え、そして送り出してくれた。
【記録】
- 日程: 2025年7月28日(月)〜29日(火)
- 形態: ガイドツアー
- 参加者: 13名(ガイド1名、ゲスト11名、添乗員1名)
- 山域: 八ヶ岳連峰(長野県・山梨県)
- ルート: 美濃戸口 → 赤岳鉱泉(泊) → 赤岳(2,899m) → 美濃戸口 → 湯川温泉かっぱの湯(入浴)
- 行動時間:
- 1日目: 3時間00分(山行2時間33分、休憩27分)
- 2日目: 9時間08分(山行5時間52分、休憩3時間16分)
- 宿泊形態: 山小屋泊(赤岳鉱泉)
- 天候:
- 1日目: 晴れ
- 2日目: 晴れ
- 難易度: 一般登山(鎖場あり)
- スタート地点: 郡山・須賀川・白河 → 美濃戸口
- その他特記事項: 文三郎尾根に鎖場あり。夕食はステーキ、朝食はおにぎり。下山後、湯川温泉かっぱの湯で入浴。
参考
【追伸:次は、あなたの番です!】
八ヶ岳での夏山登山の記録、最後まで読んでくださりありがとうございます!
記事の中でご紹介したように、赤岳は岩稜の魅力と山頂からの大展望が素晴らしい山です。鎖場もありますが、丁寧にご案内すれば初めての方でも安全に楽しめます。
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