【山岳紀行】

【山岳紀行】三方倉山 ー 紅葉の二口へ

北村 智明

初冬の気配が迫る十一月上旬、宮城県西部に広がる奥羽山脈の山域、二口(ふたくち)へ向かった。午後からの予定を控え、手軽に登れる三方倉山を選んだ。紅葉の渓谷と稜線からの展望、そして予期せぬ沢への入水。秋の終わりを告げる一日の山行を綴る。


第一部 – 黎明の山行

福島を発ったのは早朝であった。仙台市西部の秋保方面へと車を走らせる。二口峡谷へと続く林道は、紅葉の盛りを少し過ぎた頃合いだった。

午後三時から始まる飲み会に参加するため、今回は付近の低山を選んだ。三方倉山—標高971メートル、奥羽山脈が造り出す二口山域に位置する端正な三角形の山である。仙台の西方に位置し、2005年頃にボランティア団体が登山道を整備して以来、登山の対象となった比較的新しい山だ。三方が急峻であることがその名の由来と言われる。

二口峡谷自然歩道の駐車場に車を停め、準備を整える。メンバーはS、Yと私の三名。整備された遊歩道を歩いて登山口へと向かった。

朝の冷え込みは厳しく、吐く息が冷たい空気を白く染めた。しかし空は高く澄み渡り、申し分のない山日和である。名取川の支流が紅や黄に色づいた木々の間を流れ、水音が冷気に響く。赤い橋を過ぎると、「自然歩道」の標識に導かれ、山道に入った。

苔むした岩が続く沢沿いの道を進む。まだ朝露に濡れて滑りやすい。慎重に足を運びながら進むが、すぐに沢沿いの道となる。岩を伝い、沢を渡りながら進むうち、私はわずかな気の緩みから片足を水に浸してしまった。

一瞬、足首まで水に浸かり、冷たさに声が出た。SとYの笑いを耳にしながら、凍りつくような冷たさに一気に目が覚める。「これで、今日の注意深さが担保されたと思いたい」凍えるような冷たさの代償に、私は自らの緩慢な意識に戒めを与えた。


第二部 – 峻峰の連なりと黄金の絨毯

沢沿いを抜けた先の急登は、ロープが設置された斜面である。足を置く場所を選び、慎重に登っていく。まるで試練のように垂直に近い斜面が我々の前に立ちはだかった。急登を終え、ブナ林の急斜面を登り切ると、突然視界が開けた。稜線だ。

稜線に出ると、急な登りは終わり、緩やかな道をたどる。振り返ると、眼下には仙台市街が広がり、太平洋の水平線が鈍く光っている。

左手には蔵王の連なり。右手には、大東岳の雄姿、そして遙かに船形山を擁する奥羽山脈の深い山並みが見える。稜線上の道をさらに進むと、道幅が広くなり、三方倉山の頂へと続く。

午前11時35分、頂上に到着した。行動開始から1時間30分である。山頂はブナに囲まれているが、展望台の櫓に登ると、見事な360度の展望が開けた。

「午後からの予定まで時間がある」というSの提案を受け、我々は山頂で時間調整を兼ねた訓練を行うことにした。謙虚な学びの姿勢は、常に岳人が持つべきものである。SとYの三人でフィックスロープ、クローブヒッチ、ムンターヒッチ等を練習した。わずかな時間ではあったが、山行に技術訓練の要素が加わり、より意義深いものとなった。

しばしの休憩の後、我々は来た道とは別な登山道を引き返す。山道は、下りではさらに滑りやすい。朝の失態を繰り返すまいと、一歩一歩確実に足を置いた。

ブナ林の黄葉が、下りの道を彩る。樹間から差し込む光が、落ち葉を金色に輝かせていた。それはまるで、山が我々の足元に敷いた黄金の絨毯のようであった。

稜線を離れ、沢沿いの道へと戻る。朝、片足を浸した地点を通過する。今度は慎重に岩を選び、無事に通過する。


第三部 – 下山、そして山行の延長たる夜宴

午後2時45分、無事に下山した。行動時間は約4時間40分。低山ながら、二口山域の自然を堪能できる充実した山行であった。

駐車場で靴を脱ぎ、濡れた靴下を確認する。朝の入水から数時間、よく耐えてくれたものだ。着替えを済ませ、これから向かう飲み会のことを思う。

午後三時、向かいの会場に着いた。遡行同人ゴルオジの集まりである。北上山岳会、西川山岳会、八幡山岳会、白峰会等の面々が集い、テーブルには東北らしい料理が並ぶ。ベアーシチュー—文字通り熊肉を使った濃厚な煮込み、秋田のきりたんぽ鍋、そして馬刺し。山の話に花が咲く夜の宴もまた、山行の延長である。

三方倉山の端正な三角形を思い返した。小さな山だが、そこには二口山域の魅力が凝縮されていた。


記録

  • 日程: 2024年11月上旬(曇り時々晴れ)
  • メンバー: 3名
  • 山域: 二口山域(宮城県仙台市)
  • アクセス: 東北自動車道・仙台宮城ICより秋保温泉方面へ
  • 行動時間: 4時間40分
  • 天候: 晴れ
  • 行程概要: 二口峡谷自然歩道駐車場 (10:05) → 登山口 (10:15) → 三方倉山山頂 (11:34-13:38) → 登山口 (14:35) → 駐車場 (14:45)
  • 特記事項: 沢沿いは注意、紅葉は終盤、ブナ林の黄葉が美しい

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グループ情報 [東北遡行同人ゴルオヂ]-ヤマレコ

八幡山岳会(@yawataalpineclub) • Instagram写真と動画

Mt.chokai | 東北泉 – 高橋酒造店

「西川山岳会」公式サイト – 西川山岳会トップページ


【追伸:次は、あなたの番です!】

三方倉山での秋の終わりの清澄な旅の記録、最後まで読んでくださりありがとうございます!

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ABOUT ME
北村智明
北村智明
登山ガイド
日本山岳ガイド協会認定登山ガイドステージ2。ガイド歴10年。東北マウンテンガイドネットワーク及び社会人山岳会に所属し、東北を拠点に全国の山域でガイド活動を展開。沢登り、アルパインクライミング、山岳スキー、アイスクライミング、フリークライミングと幅広い山行スタイルに対応。「稜線ディープダイブ」では、山行の記憶を物語として紡ぎ、技術と装備の選択を語る。
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